コード理論備忘録 基礎 Vol.3 調性内三和声

三和声の種類

 3つ以上の異なる高さの音が同時になる時に出来る音を「和音」または「コード」と呼び、このコードのつながりのことを「和声」といいます。(和声=コード進行という認識で良さそうですが、何やら違うようです。)

 

 和音と言っても色々種類があるのですが、最も基礎的な和音はダイアトニックトライアドと言って差し支えないでしょう。ダイアトニックとはVol.2でも出てきたダイアトニックスケールのダイアトニックと同じで、トライアドとは3つの音からなる和音、すなわち三和音のことです。要するに、ダイアトニックトライアドとは、ダイアトニックスケール内の音を組み合わせて作ったトライアドのことになります。

 

 横文字ばかりを並べてもよくわからないので、具体例を紹介します。例えばCメジャーキーのダイアトニックスケールは「CDEFGAB」であるため、ダイアトニックトライアドはこれらの音を使ってトライアドを作っていくことになります。これは、以下のような形になります。

 

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図1 Cメジャーキーにおけるダイアトニックトライアド

 

 ここに登場しているコードは、ルート、三度、五度いずれもCメジャースケールに属しています。しかし、トライアドの中にも種類があり、どのように三音が積み重なっているかによって名称が異なります。

 

 ルートに対して「長三度+短三度」の積み重ねでできているものは「長三和音」「メジャーコード」と呼びます。上記ではルートがC,F,Gのトライアドがこれに該当します。

同様にして、「短三度+長三度」の積み重ねでできているものは「短三和音」「マイナーコード」と呼びます。上記ではルートがD,E,Aのトライアドがこれに該当します。

 実際はこれら2種類のコードは上記のように考えるよりも、「どちらも完全五度を含み、違いは第二音が長三度であるか短三度であるか」という捉え方をすることが多いように思われます。すなわち、三度の音が長三度なのか短三度なのかがコードの雰囲気を決める上で重要であり、そのためこの三度の音はとても大切な音程になります。(後述する表記ですが、Cmを弾かなきゃいけないのにCを引いてしまったりしたら大変です!)

 

 さて、登場していない組み合わせに「短三度+短三度」と「長三度+長三度」がありますね。これらは、それぞれ「ディミニッシュ」「オーギュメント」と呼ばれます。ディミニッシュは上記のダイアトニックトライアドにおいてルートがBのトライアドが該当します。減五度を構成音に含むところが特徴です。

 一方のオーギュメントはダイアトニックスケール上の音の組み合わせでは作ることができません。ずっと後の方でどういった役割があるのかについて解説します。

 

 以上をまとめると、以下のようになります。

 

トライアドまとめ

・「長三度」+「短三度」→「メジャー」

・「短三度」+「長三度」→「マイナー」

・「短三度」+「短三度」→「ディミニッシュ」

・「長三度」+「長三度」→「オーギュメント」

(メジャーとマイナーの違いは三度の長短のみなので、

・ルート、長三度、完全五度→メジャー

・ルート、短三度、完全五度→マイナー

と考える方が一般的な気がします。)

 

これらを図にすると以下のようになります。

 

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図2 トライアドの種類

 

三和音のコードシンボル

 上記の図でも記してしまいましたが、4種類のコードはそれぞれ簡潔な表記法があります。コードシンボルは、「ルートとそのコードの種類」を表しています。すなわち、

・そのコードのルートはなにか?

・そのコードは上記4種類のうちどれか?

が分かればコードは一つに定まるということです。使いながら慣れていきましょう。

 

 メジャートライアドはルートのみで表記されます。すなわち何も書いてないものはメジャーコードになります。マイナートライアドの場合は「m」「-」がルート音名の隣に表記されています。ディミニッシュトライアドの場合は「」「dim」「m(♭5)」と書かれています。オーギュメントは「+」「aug」と書かれています。私は文字で書くときは「m」「dim」「aug」と書くのが好きですが、楽譜で表記するときは「m」「゜」「+」と書きますね。

 

 ダイアトニックトライアドについて、上記表記をもとに各コードシンボルを記したものが以下のようになります。

 

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図3 ダイアトニックトライアド

 

三和音の転回

 ニ音のときと同様に、三和音でも転回の概念は導入することができます。すなわち、今まで登場したコードはすべてルートが最低音でした。しかし、この音の積み重ね方を変えることで「同じコードだが最低音が違う」という転回形をつくることができます。

 その際、最低音が何になるかを表現する必要があります。例えば、CメジャーにおいてCEGの順に重なっていた音をGCEに変えると最低音はGになり、これはC/Gのように表記されます。以下は具体例です。

 

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図4 三和音の転回形

 

 この転回形はコード進行をスムーズに進ませるためには必要不可欠です。先の話ですが、転回形を利用するコード進行として有名な例ではカノン進行が挙げられます。

 

 転回形を利用してもコードの役割や機能は変わりませんが、やや不安定な響きになると言われています。そのためか、バロック音楽や古典音楽では最後のコードが基本形であることがほとんどだそうです。

 

Vol.4に続く。

 

参考:コード理論大全,清水響 著 リットーミュージック